『スタアの恋』第七話
第七話の翌朝に
〜そして八話が待ち遠しい〜

川本 千尋



 だからなんでこれを早くやらないんだ!>七話
 
 これでしょう、これ!
 お話があり、メインもサブも、キャラクターが生きている。
 
 サンマルコトリオと草介、初めて「ああ、ずっと一緒に働いている仲間なんだなあ」と思いました。今までは思えなかった。そういうふうには作ってあるけど、感じられなかった。
 
 朝の営業所、スポーツ紙を囲んで心配しているトリオ。そこに入ってきた草介に小金井所長が「草介、ヒカル子さんにストーカーだってさ」。
 ヒカル子のパーティから草介の部屋に移動してささやかな乾杯。「ヒカル子さんが別の世界の人っていうのは最初からわかっていたじゃないですか」。草介の言葉に、胸を痛めて微妙な反応を返すサンマルコトリオ。
 
 このニュアンスが今までなかったじゃありませんか。「そういうふう」には作ってはあったけど。
 
 牛山くんだってそうですよ。前回、監督の思わせぶりな長話で延々と語ってはくれたけど、所長と次屋が気づかないことの方がやっぱりおかしい。どんなにおとぎ話でも、あれはおかしい。わざと気づかない、というギャグとしても成り立たず、うー、やっぱり六話、惜しいなあ。あれ丸ごとないほうがよかったな、六話。
 
 本来、突然「牛山がつぼみを好き、でもつぼみは草介が好き」なんて図式を出してきてもダメでしょっ。視聴者が「牛山はつぼみのことが好きなんだ」と知る前に、もっともっともっと、つぼみに絡んでおかなきゃダメでしょう。あっ!あのセクハラはスカートめくりだったのか!という発見を視聴者にくれなきゃだめでしょう。好きな女の子のスカートをめくる男の子がエスカレートして大人になると恐いー、でもかわいいなあ牛山。いいキャストを得て、せっかくいいネタふりも冒頭三話にしこんであったんだから。ああもったいない。
 
 ヒカル子の事務所側は「みんながヒカル子大事大事」という図式がはっきりしていて、そのトーンを微妙に崩す麗子ちゃんが最初から生きている。対してサンマルコ側。キャラクター設定のみでお話作りをきちんとしてこなかったからもどかしくて辛かった。でも今回の七話でスカッとしました。
 
 ああよかった。わたしは最後まで楽しみにこのドラマが見られる!キャラクター全員に愛着が持てる! 麗子なんて抱きしめてやりたいぐらい可愛いです(笑)。
 せっかくのクサナギツヨシの連続ドラマ、自分がドキドキしながら見たいんです。ええ勝手です。

 今回、クサナギファンとしてのツボ、ドラマファンとしてのツボ、たくさんありましたが、わたしが一つ選ぶなら、
 
「草介さん、すごいお勝手!」

 こういう台詞がほしかった。
 つぼみちゃんは「お勝手」。こういう言葉が普通に出てくる女の子なんですよね。もったいぶった台詞じゃなく、こういう生きた言葉が出てくると心が跳ね上がります。
 
 今回、恋愛模様の全員の心が的確に細かく描かれてホッとしました。
 
 つぼみちゃん。ワサワサしたオヤジ連中に囲まれて毎日仕事している「お勝手」なんていう庶民の真面目な女の子が、オヤジの中で一人だけ真面目で優しい同僚の男の子がいいな、と思っているうちに恋心に変わる。だから初めは、草介に関わってくる芸能界がイヤで、その一員としてヒカル子に対抗意識を持っていたけれど、草介のヒカル子に向けるまっすぐな恋心に気づいてしまう。気づいたけれど、うち消したい。うち消したいけど、好きな人の本当の気持ちって、わかっちゃうんですよねえ。
 
 何より、ヒカル子と草介。前回、なんだかよくわからない人たちだった二人が、生きたキャラクターに戻ってきました。
 
「焼きそば食べたかったんですよね」
「……ごめんなさい」
 
 そう、焼きそば、も、食べたかった。でも何より草介に会いたかった。「焼きそばとか屋台とか、自分とは違う庶民・草介の世界」で遊ぶのが一番の目的じゃない。草介に会いたかったんだよね、ヒカル子。
 
 もうむちゃくちゃかわいかったなあ、ヒカル子。泣くまい泣くまいとクシャ顔になっちゃって顎に梅干し出るほど歯を食いしばって、涙目。スタアの顔じゃありません。でも、人間の顔。対照的なのが共演男性と恒例のデート場面での「まあ、きれいな夜景」、この台詞の、見事な心のこもらなさ(笑)! 笑いましたー。心のこもらないボッコちゃんみたいなヒカル子と人間のヒカル子。いい対比です。
 
 草介がヒカル子を好き、って気持ちは、ヒカル子以上に恋ですね。運命の恋。ヒカル子にとっても草介は運命ではあったけど、けっこう理詰めで自分の気持ちを整理しようとしている。「違う世界の人だから珍しい」→「違う世界の人だから一緒にいると楽しい」→「違う世界の人だから、ではなく、草介さんが好きなのかも?」→草介自身に否定される、と五話まできたヒカル子。対して、ひたすら振り回されつつ、ヒカル子という女性に惹かれ、ドキドキする自分を必死におさえてきた草介。夜中の顔洗いも、電話も、神社も、愛しい。
 
「住む世界が違うから」好きなんじゃない。それに気づけば「住む世界が違うから」諦める必要もなくなる。終盤、どんな展開になっていくのか本当に楽しみです。

 脚本、演出ともに大変オーソドックスなラブコメ作りを堪能いたしました。ああそれにつけても、四、五、六話のトーンダウンが惜しいなあ。



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