『ライオンハート』
(1990年/ジャン・クロード・ヴァン・ダム原案・脚本・主演)



 ヴァン・ダム演じるリヨンは、過酷な外人部隊の兵士。ある日、弟の妻から、弟が瀕死の重傷を負った、と連絡が入るが、部隊の責任者は休暇を許可しない。やむをえず部隊を脱走して弟一家の住むロスアンジェルスへ向かうリヨン。しかし密航した船が着いたのはニューヨーク。
 ロスに電話する小銭もなく街をさまよううち、スラムの片隅で賭博ストリートファイトを見かける。ルールはナシ。ただ殴り蹴り、何をしてもいいから倒した方の勝ち。勝者には掛け金の何割かが手渡される。貧困と金への執着、暴力に沸き上がる抑圧された人々の血液。
 
 ファイトをぐるりと取り囲む、ギラギラ、テラテラと揺れる群衆。鉄格子はないけれど、これはまさに、本放送前に流れた予告編そのもの! いいですよー、この映像!

 妹に電話する金もなく、たまたま通りかかったストリートファイトで金が動くのを見て、ふらりと参加。見るからに強そうな相手。ヴァン・ダム演じるリヨンはどちらかと言えば小柄。群衆の掛け金は当然相手に集中する。リヨンに賭けるのは胴元のオヤジ一人だ。
「名前は?」
「リヨン」
「外人か? 変な名前だ。ライオンの方がいい!」
 さして屈強に見えぬ新顔・ライオンは、相手をカンタンにたたきのめしてしまう。数発のパンチで100ドルが胴元オヤジと彼の手に。

 彼の強さに惚れ込んだ胴元オヤジに連れて行かれたのは、小汚いストリートファイトではなく、金持ちの集まる賭ファイト場。彼らを迎えたのは、美しく高慢な女主催者。
「彼の名前は?」
「ライオンハート!」
 札を握りしめた紳士淑女(笑)が「いけ!」「やれ!」とわめきまくる中、殴り合う男二人。勝ったリヨンと胴元オヤジは、それぞれ5000ドルという大金を手にする。

 一週間以内にもう一戦、もっといいお金で、と誘う女主催者。しかしリヨンはロスに行きたい。俺が闘ったのは家族のためだ。俺のためでもあんたらのためでもない……。女主催者はあっさりと彼を手放した。

 ようやくロスにたどり着いたリヨンは、弟の死を知らされる。訪ねて行った義妹は、夫は密輸に手を出して死んだ、それは兄に誘われたからだとかたく信じていた。それは警察がでっちあげた嘘なのだが、義妹は信じ切ってリヨンを憎んでいる。家賃はもちろん、保険切れで抱え込んだ莫大な医療費。「唯一の家族なんだ。助けさせてくれ」。しかし、裏切り者と信じるリヨンの金は断じて受け取らない。失意のまま去るリヨン。

 今や怪しき相棒となった胴元オヤジが、酔いつぶれたリヨンを連れて行ったのは、「彼の気が変わったら連絡して」と電話番号を渡した女主催者のロスの別宅、高級アパートメント。色仕掛けで誘って拒否されても、服を見立て、連れ回す女主催者。ニューヨークで彼のファイトを見た彼女は、彼を最強のチャンピオンとして賭博を開催したいのだ。

 考えに考えて、リヨンは彼女の賭博ファイトに出場することを決意する。条件は、銀行口座を開くこと。それも、彼の金は断固として受け取らない義妹名義の。そしてもうひとつ、彼女のアパートを出ること。「ファイターらしく生活したいんだ。ここはぜいたくすぎる」。

 ロスのファイトが始まる。高級自家用車がぐるりととりまくファイト場。相手もニューヨークとは段違いに強い。リヨンは苦戦のあげく、ようやく勝ち抜ける。

 今はマネージャー兼セコンドである胴元オヤジは、リヨンの頼みで義妹のもとを訪ねる。「あなたの夫は家族に黙って保険に入っていた。お嬢さんに自転車を買ってあげてください。これから毎月、わたしが小切手を届ける」。リヨンは匿名で義妹母子に金を贈るのである。

 ロスのセカンドファイトは狭い閉鎖空間、スカッシュコート。強化ガラスをぶちぬいて吹っ飛ぶ挑戦者。

 ロードワークの途中、リヨンは嬉しそうに自転車に乗る姪を見かける。ビルの陰からそっと見つめるリヨン。その彼をビルの上から見下ろす怪しい男たちがいた。外人部隊を脱走した彼を軍法会議にかけるため、執拗に追い続ける連中である。

 サードファイトは高級住宅の、ほとんど水をぬいたプール。プールの周りをぐるりと取り囲み、ファイトを見下ろす金持ちたち。楽勝で勝ち抜くリヨン。

 義妹と姪の様子をこっそり見に行ったリヨンの前に、外人部隊からの追っ手が現れて大乱闘。すんでのところで女主催者の番頭が現れて助かったが、肋骨を折られる重傷。医者に金をつかませて、胴元オヤジにも絶対言うな、と口止めをする。

 胴元オヤジはリヨンを義妹ヘレンの元に連れてゆく。保険は嘘で、あの金を拳ひとつで稼いだのが彼なのだ、と。本当の事情を聞いて、ヘレンも心を開く。ここにいては危険だ、と、住居を移らせる。

 そのころ、女主催者の番頭は、次の挑戦者のビデオを彼女に見せていた。格の違う殺し屋。相手に隙を見せて安心させておいてとどめを刺す恐ろしい男。

 ビデオを見ていたのは主催者たちだけではなかった。リヨンの引き渡しを求める外人部隊の追っ手である。「ご覧の通り、ファイトが決まっているから彼は渡せない。あの男が彼をたたきのめしたら、お好きなように」。

 女主催者のリムジンが迎えにやってくる。彼に大金を賭けてくれる金持ちのカモに会わせるためだ。

 カモとリヨンに見せるビデオテープは、殺し屋が隙を見せてやられまくっているところだけ。リヨンもカモも、ひっかかってしまう。カモはリヨンが勝つと信じて大金を賭ける。リヨンも肋骨を傷めた体でも勝てるだろうとたかをくくる。

 リヨンは、姪たちを児童公園で遊ばせるが、肋骨の痛みはまだひどい。公園で、義妹と姪と過ごす、穏やかなひととき。「今夜試合がある。この勝負に勝ったら、きみたちを今の生活から連れ出す」。

 戦いの直前、胴元オヤジに肋骨の件がバレる。
「大丈夫だ、今まで稼いだ有り金全部、自分に賭けた。必ず勝つ」
「あいつはチョロいどころか8人も殺してるやつなんだ! お前はボロボロのからだになって、俺みたいになりたいか? 安っぽいストリートファイトのマネージャーに?」
「こんな稼業から足を洗わせてやる。お前も、俺の家族も、シンシア(女主催者)も」
「……お前はシンシアをどんな女だと思っているんだ。お前の欠点は、ハートの大きさだ。ライオンのように強いが、そのハートのせいで、お前は自滅する!」

 そして、肋骨に爆弾を抱えたまま、殺し屋とのラストファイトが始まる。

 一方的にやられるリヨン。もう立つな!殺される!と告げる胴元オヤジの声をふりきり、立ち上がる。女主催者が相手に賭けたことを知ったのである。「あの女、俺を裏切った」

 しかし、再び叩きのめされるリヨン。「もう立つな、俺みたいになりたいのか! 負けても大丈夫だ、金は山分けしよう。俺はあいつに賭けたんだ!」

 三度立ち上がるリヨン。ボディはダメだが足がある! 無敵の蹴りの連続技が炸裂! 会場全体が「ライオンハート!」の声援で揺れる。

 勝った彼を、外人部隊からの追っ手も礼を尽して迎えた。「よくやった。これで君の家族は安心だ。さあ、部隊に帰ろう」。

 義妹と姪を胴元オヤジに託し、外人部隊へと戻ってゆくリヨン。

 しかし、追っ手は彼を車から降ろした。家族と友達のもとへ駆け戻るリヨン……。


END

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 わたくし、
 
ライオンハート………………満
マネージャー兼セコンド……如月
女主催者と番頭………………………冴香&宮園
義妹と姪………………………………麻奈美&つくし園

 に置き換えて、しっかり楽しんでしまいました(笑)。