「フードファイト第八回 感想」
〜本日の味付け・Beyond the taste;味付けの果てに(笑)〜

松本 有紀


フードファイト第8回。見終わって呆然。けっこうこのドラマ見るたび呆然とはしてますが、今回は違う意味で呆然。

「感じる自分」が2人いたような感じだったから。
話全体の流れにゆるやかに取り込まれて、ちょっと涙しちゃったりしてるような自分と、今までさんざん書いてきたとおりの、相変わらずの、「こんなホン書きやがってふざけてんじゃねーぞコラァ」(暴言ごめんなさい、山崎淳也さん)な自分と、2つの自分がいて、なんだかめちゃくちゃに混乱したから。

で、とりあえずくやしいので、いろいろ気に食わないことをひとつづつツッコミ入れていこうかとおもってしばし考えていたのですが、いや、いろいろあるんですよ(笑)。まぁ「大東京音頭」はもう書くだけで貧血おこしそうだし(爆)、裕太のエピソードもなんだかなぁ、だし。身代わりだかなんだか知らないけど「養子縁組」ってそんないいかげんなものじゃないだろう、とか、だいたい裕太の話の筋の肝心な部分、「赤緑色盲」のところで、「女性には、めったに出ない症状なんだそうですけど」とか、ツッコミよけの言い訳がましいセリフつけてくるくらいならその前に、この全体的にツッコまれまくりの脚本どうにかしろ、とか、孤児院育ちの孤高のヒーローが、「俺たち日本人は」とか「大和魂」とか突然言い出して、いきなりきもちが国家に所属しちゃっててそりゃなんだ、とか、「ラテン音楽」と「盆踊り」をいきなり比較してくるのって、「フランス料理」と「おにぎり」を対比させてるようなもんで、おかしかないか?とか、浴衣姿?の九太郎、ぜんぜんどっからみても安い人形(鳥形??)、とか、クサナギツヨシの浴衣、襟元もっとどうにかしてやれ、とか(笑)・・・まぁいろいろあるんですけど、でもなんだか考えていくうちに、「わたし、こんなことしてて、重箱の隅つついちゃってるだけなんだろうか?」なんて気分になってきたりして。

もしかして、もしかして、この「フードファイト」、だんだん、正しく荒唐無稽になってきてるのかもしれない。原作のない漫画、それを成立させはじめてるのかもしれない、って思って、ぞーっとしてしまいました。ぞーっとするあたりがまだふっきれてないな、わたしは。

でもクサナギツヨシはとっくにふっきれているようです。このドラマを、ただの「めちゃくちゃな脚本」から「正しく荒唐無稽なヒーローもの」に変えつつある要因がなにかあるとしたら、わたしはやはり、それはクサナギツヨシの演技の力によるものが大きいのではないかと思うのです。

初回で、今までの引き出しを全部ひっぱりだしてぶちまけ、無残な姿をさらしていたクサナギツヨシが、「今までの自分の観念にない、井原満の悲しみを想像して、想像して、感情移入する(月刊テレビジョン)」ことで、脚本のどんな暴走にも耐えられる、強力な機関車となって走りはじめ、このドラマが、少なくとも敷かれたレールの上で暴走しているのだと、だからどんなに話がめちゃくちゃでも、わたしはそれなり納得し、見終えたあとに、「なんか・・・いい話だったなぁ」なんて思えるようになっているのではないかと思うのです。

さっきから脚本がめちゃくちゃ、めちゃくちゃ、とずっと言っていますが(笑)、でもほんとのところ、脚本もずいぶん良くなってると思ったりもしています。「良くなってる」って素人が偉そうでごめんなさいだけど(^^;;、最初のころにあった、とにかくただ書き言葉を羅列してるだけだったようなところが回を追うごとに減り、語り言葉としてとても心地よい部分が多くなっています。今回、満のアパートでの裕太とのシーン、満と冴香のシーン全般、最後の俊ちゃん(らぶ・笑)ラーメンの屋台でのシーンなどもそうなのですが、言葉で過剰に表現しなくても、役者の表情と、短い受け答えのセリフだけで、十分に伝わってくるシーンが多くなっているように思います。

ただ今回とても残念だったのは、ゲストの羽賀さんで、いや、決して下手とか悪いとかそこまでのことではないのですが、羽賀さんから、「憎しみと、怒りしかない、哀しみも痛みも知らないロボットのような男」という造型がうまく伝わってこなかったところです。ちょっと軽めだったというか・・・典型的なヒールであるカルロスの冷酷なところが、羽賀さん自身からもっと伝わってきたなら、ファイトシーンがもっともっと、緊張感あふれるものとなり、戻ってきた裕太、その後の満のモノローグでもっともっと泣けたんじゃないのかと思ったり。

あ、だんだんいろんなこと期待した上で注文つけてる、わたしったら(爆)。

こうして、「絶賛」とは言わないまでも、だんだん「賛」モードになりつつあるわたしなのですが、でも、それでもまだ言いたいことはあるの(笑)。

掲示板の方にも情報をいただいておりますが(ありがとうございます)、8月26日付日本経済新聞、「NIKKEIプラスワン ヒットの裏側」記事中の西憲彦プロデューサーのコメント、

「孤独の影をもつ永遠のヒーローを狙った。ギャグで笑わせながらも、きちんとした人間ドラマにした」
「大人でも真剣に見てくれれば、子供のころの正義感がふつふつとわき出してくるはず」

え”〜?(爆)


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