『僕の生きる道』第五話

〜「神様お願いです。1話でいいから増やしてください」〜

湯山きょう子


 降参です。星護、佐藤祐市。二人の演出家の使い分けの妙。TEAMを思い出した、と、5話終了直後に掲示板に書いたゆえんです。
 
 この役割分担の妙はどうでしょう。重松、岩田、両プロデューサーに拍手です。現実的で生臭い話は、明るく佐藤ディレクターが。全体のトーンと、秀雄とみどりの、心の奥底をイメージさせる転換期は星ディレクターが。毎回見ているわたしは、このメリハリにうっとりさせられています。
 
 今回、わたしが一番好きなセリフは、金田医師の、
 
 「あ、あれ嘘」
 
 です。金田医師の、秀雄に対する「予言者としての役割」は、終わったのですから(笑)。これから、二人を見守る人になってくれるのでしょう。もう予言はしないのです。どんな風に幸せになる、とも、いついつ、キミの人生が終わる、とも。まっすぐ、自分と向き合って、自分で「僕の生きる道」を決めていけるよう、励まし続けてくれることでしょう。
 
 でも、大好きなシーンは山盛りで、とても選べません。
 
 みどり先生と、久保先生の別れ。
 螺旋階段。その、ふたりの位置。
 椿姫の“乾杯の歌”。
 雅人への手紙が、当人にわたる道筋。
 理事長の名文句。
 雅人と萌が、ふたりであやまりに来るところ。
 病院ですれ違う、みどりと秀雄。
 若きアイドル好きの先生がかわいくてかわいくて……。
 アイドル好きだから、学業との両立は難しいとつぶやいたりして。
 杉田めぐみの怒り。
 「元気づける歌」ではなく「吸い込んでしまう歌」という言葉の選び方。
 
 アイドルになりたい愛華と、歌手になりたいめぐみの、夢の違い。ガッカリさせて、もう一度ひっくり返す。みどり先生の感激。
 
 ……中村先生、もしかして、恋愛の達人?(笑)
 
 ガッカリさせて、もう一度ひっくり返す。その瞬間は、わたしの頭の中でも花火が上がりました。バカです(爆)。いや、だって、わかってたのに、そうなるって。なのに、きちんと台本通りに演出通りに引っかかって、秀雄と同じようにびっくりしちゃったんですから(笑)。
 
 “乾杯の歌”。藤原歌劇団の合唱団が、精力的に学校を回っています。そこでは日本語でいろいろな歌を聴かせてくれます。ごく普通の愛唱歌から、オペラの名曲を。他にも、幼いうちから子どもたちによい音楽を、という試みはありますね。もしかしたら、秀雄はそれを聴いたのかなあ。
 「尊敬する人・パパロッティ」。聴いたことあったんでしょうか、小学生の秀雄は(笑)。ただ、一番有名なテノールの人、という判断なのかなあ。
 クサナギツヨシではなく、中村秀雄は、間違いなく、思春期に自分の声変わりにショックを受けたことでしょう。夢は、そこで破れたのか、それとも……。
 
 わたしは、中村秀雄に感動しました。それは、手紙です。縷々綴られる内容は、最初、自分のことばかりでした。余命短い人、死ぬのが怖い人。
 
 “いのち”
 
 とは、自分=いずれ雅人が診る患者の命であり、雅人が彼女のお腹に宿らせたかもしれない命のことだと思って聞いていました。それしか浮かばない秀雄だと思っていました。ところが最後に、
 
 “まず、自分の命のことを、たった一つの命のことを”
 
 その手紙に、わたしは秀雄の成長を見ました。5話に到った秀雄を。

 クサナギツヨシは、第五話の、中村秀雄でした。




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